【カロリー制限食なら必ず食後高血糖を生じる】という大嘘

ちは。
最近、「糖質制限をやめて高強度筋トレを始めたい」という方々から、相談メールを多く頂きます。
そういう方々が一様に心配されているのが、「食後高血糖」という問題です。
これは今までにも何度か説明して参りましたが、今回は軽く復習してみたいと思います。
まぁ、心配な方は、最初の内は血糖値を計りながら、徐々に糖質量を増やしていくことをお勧めします。
そうすれば、自分の目で血糖値が上がらないことを確認できますから、納得できることと思います。

まず、最初に覚えておかなければならない重要なことは、私たちの身体(骨格筋等)が、どのようにして糖を取り込むのか、ということです。
骨格筋が糖を取り込むためには、GLUT4というグリコーストランスポーターの働きがなくてはなりません。
これが働くためには、インスリンが分泌されるか、または筋収縮(運動)の二通りしかありません。
逆に言えば、インスリン経路が使えないなら、運動すれば糖は取り込める訳です。(*注1)
そして後述にありますように、インスリン感受性を高めるためにも運動は重要になります。
(つまり、運動はインスリン感受性を高めながら、同時に糖を取り込むことができる。)

以前の記事「骨格筋GLUT4タンパク発現に対する単発の高強度短時間運動」で、高強度の短時間運動を1回行っただけでも、運動直後の糖の取り込みが顕著に上昇するとともに、運動翌日にはGLUT4タンパク発現が増加するということを紹介しました。
これは、ラットの実験で、たった3分20秒の高強度運動で、運動直後の糖取り込みが上昇し、16時間後のGULT4が34%増加したというものです。
つまり、たった3分20秒の高強度運動をするだけで、16時間以降も糖を取り込み続けるということなのです。

もちろん、高強度の運動というからには必ずしも筋トレでなくても良い訳です。
ただ、筋肉を効果的に増大させるには、高強度の筋トレでなくてはなりません。
筋量が増大すれば、GULT4自体の量や筋グリコーゲンの貯蔵量も増えるので一石二鳥です。
私が極真空手やキックボクシングをやっていた頃も、運動自体は高強度でしたが、筋量を増やそうと思ったら、稽古以外にみんな筋トレを行っていたのです。

また、運動を行った場合と行わない場合とでは、運動を行った方がインスリン感受性が亢進することも解っています。
普通に糖質の摂取により上昇した血中インスリン濃度は、2時間程度で安静レベルへと回復してしまいますが、運動後ではインスリン感受性が亢進することによって、より低い血中インスリン濃度でも、骨格筋は糖を取り込み続けることができます。
このインスリン感受性の亢進による糖取り込み活動によって、筋収縮刺激による糖取り込みの増強効果が消失した後(運動終了3時間後から運動の十数時間後まで)、骨格筋はグリコーゲンを緩やかに再合成させることができます。
Reversal of enhanced muscle glucose transport after exercise: roles of insulin and glucose

更に、運動でGULT4の発現量が最大になる時というのは、筋グリコーゲンが枯渇した時です。
筋グリコーゲンを大量に消費する運動を行い、糖質を摂取すると、運動の24~48時間後において、筋グリコーゲンが運動前のレベルを超えるまで回復することができます。
(つまり、筋グリコーゲン貯蔵量が増える。これを筋グリコーゲンの超回復と言います。)
そして、最新の研究では、10分間の短時間高強度運動(休憩10分を含む総時間は20分)が4時間の長時間低強度運動と同等の筋グリコーゲンの超回復を生じさせたという結果があります。

で、まとめますと、
1.糖尿病になると、インスリン経路での糖の取り込みができなくなる。(できにくくなる)
2.残りの方法は筋収縮(運動)以外にない。(もしくは薬の服用)
3.運動後も糖を取り込み続けるためには、筋グリコーゲンを大量に消費する運動が必要。(GLUT4の発現量が増える)
4.3の運動を行えば、同時にインスリン感受性が亢進し、少ない血中インスリン濃度でも糖を取り込める。
5.筋グリコーゲンを大量に消費するには、長時間低強度の運動よりも短時間高強度の運動の方が効率が良い。(*注2)

また、高強度で筋トレを行えば、やればやるほど筋肥大により糖を取り込む能力が大きくなるということで、その点が、後になればなるほどモヤシ化して糖を取り込む能力が逆に減ってしまう糖質制限と違うポイントなのです。


補足:

*注1:
筋収縮による非インスリン依存での糖の取り込みは、ATPが分解されることにより、細胞内のAMP:ATP比の増加によってAMPKと呼ばれる酵素が活性化されることによって亢進します。
最近では、細胞内のCa2+濃度を上昇させるカフェインを負荷することで、糖取り込み速度が亢進するという研究結果も報告されています。
これは、細胞内で上昇したCa2+によって活性化されるCa2+/calmodulin依存性プロテインキナーゼ群(CaMKs)と呼ばれる酵素が関与していると考えられています。

*注2:
現実問題として、4時間の低強度運動(有酸素運動など)は普通の生活をしている人にはできません。
たいていの方々は、30分~1時間ほどだと思います。
しかしながら、この程度では筋グリコーゲンを大量に消費することはできません。
その点、高強度運動であれば、休憩も含め20分程度でオールアウトできる訳です。
高強度筋トレが休憩も含め1時間程度で十分な理由は、こういうことです。
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