前回は、肥満と高脂肪食がインスリン抵抗性をもたらすということ、そして、糖尿病というのは、一旦歯車が噛み合わなくなると、悪循環が悪循環を呼ぶという点について述べました。
今回は、肥満と高脂肪食が、インスリン抵抗性のみならず、更なる悪循環をもたらす点について、もう少し述べたいと思います。
以前の記事「誰も治らない糖質制限-6」で紹介した論文では、肥満と高脂肪食は、膵臓のβ細胞において、インスリン分泌自体をも障害する、と述べています。
膵臓のβ細胞は、GLUT2により細胞にグルコースを取り込むことで血糖の上昇を認識しそれに応じたインスリン分泌をしています。
ところが、β細胞環境に遊離脂肪酸濃度が上昇すると、細胞表面でのGLUT2の発現が低下し、グルコース刺激によるインスリン分泌が障害されてしまいます。
と、同時に、遊離脂肪酸はβ細胞において、Toll様受容体の一種であるTLR4を活性化し、ケモカインを産生します。
ケモカインは膵島にマクロファージを呼び込み、TNF-α等の炎症性サイトカインを分泌し、膵島に炎症を引き起こし、膵臓の機能障害をもたらします。
(【高脂肪食で膵臓の機能障害が増す理由】御参照)
肥満と高脂肪食が、インスリン抵抗性を引き起こしたかと思ったら、同時に膵臓そのものの機能障害までを引き起こし、インスリン分泌にまで障害が及ぶのです。
ここまでの悪循環をまとめると、まず、肥満と高脂肪食はインスリン抵抗性をもたらします。
一旦、インスリンが働かなくなると、最初の記事【インスリンとは何か?】で説明した様に、脂肪の合成は滞り、分解が亢進し、結果、ますます遊離脂肪酸が増えます。
糖尿病になる様なデブは、運動しませんし、無自覚なデブは、ここにおいても高脂肪食を続けたりするので、ますます遊離脂肪酸は増えます。
と、同時に肝臓では糖新生が亢進します。
糖新生が亢進すると、PEPCKとG6Paseという酵素の発現が増加しますが、この二つの酵素の増加は、これまたインスリン抵抗性を高めます。
糖新生が亢進するということは、本来は飢餓時なので、インスリン抵抗性が高まることは、生体的には合目的と言えば合目的です。
飢餓時であれば、どんどん糖を作らないといけませんし、供給不足に成りがちな糖は優先的に脳や赤血球に供給せねばなりません。
放っておくと、糖のほとんどは骨格筋に吸収されてしまいます。
骨格筋に発現するGLUT4は、グルコーストランスポーターの中で、唯一インスリンによって調節されます。
ある程度糖が増えた時に、骨格筋が糖を吸収できるというシステムでないと、ほとんどの糖は骨格筋に吸収されてしまうからです。
ところが、糖尿病においては、このシステムが丸っきり裏目に出てしまいます。
そして、ついには、インスリン分泌までをも障害し、β細胞の機能障害を引き起こします。
ここまでで許してもらえると思ったら、大間違いです(笑)
更に、これでもかというぐらい苛められます。
インスリン分泌までもが障害を起こし始めると、今度は膵臓のβ細胞自体も委縮し始めます。
膵臓のβ細胞では、インスリン受容体基質・IRS2以下のシグナル伝達を介し、細胞増殖や機能調節を行っています。
つまり、インスリン不足になると、β細胞自身も増殖できず機能不全に陥り、ますますインスリン分泌不全に陥るという悪循環になります。
このシリーズ・最初の記事【インスリンとは何か?】で紹介したインスリンの5つの働きに加え、糖尿病に関連してのインスリンの重要な働きは、
6.インスリンは、血管内皮細胞において、NO合成酵素を活性化しNOが産生され、血管の拡張を促す。
7.インスリンは、膵臓のβ細胞自身の増殖や機能調節を行う。
というものです。
-つづく-

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