
ちはっす。
一般的に「糖尿病は治らない」と言われています。
とは言え、その理由について明確に説明されているものを見たことがありません。
中には、「ガイドラインに”治る”と書かれていないから」とか、「完治の基準がないから」と言うトンチンカンな医者もいます。
医学的根拠や妥当性も語らずに、ガイドラインや診断基準を盲目的に適用するだけなら、私にだって医者はできます。
こういうトンチンカンな医者は、初期臨床研修医時代に厚労省の「臨床研修の到達目標」をヒーヒー言いながらクリアしたのかもしれませんが、医学的な思考や考察をもって患者や病気に接していたとは到底思えません。
「その診断の医学的根拠は何?」と問われても、せいぜい「指導医がそう言ったから」という答えしか返って来なかったでしょう。
一方、「糖尿病は治らない」という理由の中で、一見もっともらしい説明もあります。
糖尿病が進行すると、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が死滅して行き、死んだ細胞は蘇らないので糖尿病は治らない。
というものです。
ほとんど全員の糖尿病ニューカマーの皆さんは、この手の説明を読むと、観念します(笑)
しかしながら、こんな与太話で納得も得心もしていたら、到底糖尿病など治りません。
まず、死んだ細胞が蘇らないのは当たり前のことで、どんな細胞だって死んだら蘇りません。
それはβ細胞に限ったことではありません。
何言ってんだ、イカレポンチ。
と思わなければいけない箇所です(笑)
β細胞が死滅して行くのは良しとして(良くはないんですが。笑)、問題は、何ゆえβ細胞が死滅して行く一方で増殖(新生・再生)しないのか?
と、疑問を持たねばなりません。
と言いますのも、β細胞自身は、妊娠時や初期インスリン抵抗発生時には増殖して対応しているので、増殖能自体が無い訳ではないのです。
問題は、何ゆえ糖尿病になると、β細胞は増殖しないで死滅して行くのか?ということなのです。
膵臓β細胞の新生と環境
そんな訳でその辺の疑問を調べることにしますが、当然のことながら、ネットの糖尿病記事やインチキ医師のブログ程度では、適当なことしか書かれていないので、基礎研究や専門的なサイトで調べます。
あ~でもない、こ~でもないと、ネット上で調べてる内に見つかります。
インスリン分泌不全とβ細胞機能不全の改善は可能か?
という記事の中で紹介した、米国糖尿病学会のサイトに発表された論文です。
β-Cell Deficit and Increased β-Cell Apoptosis in Humans With Type 2 Diabetes
(2型糖尿病のヒトにおけるβ細胞機能不全とβ細胞死の増加)
この論文によれば、健常者と2型糖尿病患者との間で、β細胞の増殖能力自体に差はない、とあります。
但し、糖尿病患者の場合、β細胞の死滅が健常者に比べると3倍~10倍のスピードで起こるので、結果としてβ細胞は委縮して行く、ということです。
なんと。
β細胞は増殖していないのではなく、増殖していたのです。
ただ、死滅のスピードが速いために結果として委縮していた訳です。
そして論文は、β細胞の死滅を阻害すれば、膵島新生が損なわれていないので、β細胞量の回復につながる可能性がある、と言います。
俄然、やる気の出るお言葉を頂戴しました(笑)
仮にこの論文が正しいと仮定すると、次の疑問は「何ゆえβ細胞は死滅して行くのか?」ということです。
この問いに対する答えは、比較的容易に探し出すことができます。
ちょっと論文を検索すれば、いくらでも出て来ます。
その中の一つで、以前記事でも紹介した、我らが東京大学の論文を紹介しましょう。
この論文は、Cell Metabolism に掲載された論文です。
Saturated Fatty Acid and TLR Signaling Link β Cell Dysfunction and Islet Inflammation
β細胞環境下に遊離脂肪酸濃度が上昇すると、とりわけ飽和脂肪酸であるパルミチン酸は、TLR4という細胞表面にある受容体タンパク質であるToll様受容体の一種を活性化します。
TLR4は、TLR4-Myd88というシグナル伝達経路を介し、サイトカインの一種であるケモカインを産生し、細胞から放出され、M1型マクロファージを膵島に呼び込みます。
M1型マクロファージは、インターロイキン1βやTNFαといった炎症性サイトカインを分泌し、膵島に炎症を引き起こし、β細胞の機能障害をもたらします。
そして、この炎症性サイトカインが更にケモカインの分泌を促進し、膵島の炎症は更に悪化するという悪循環になります。
この炎症により、β細胞のアポトーシス(死滅)が進んで行くことになります。
なるほど、病院で「痩せろ」と言われる訳です。
当然のことながら、この場合の「痩せろ」という意味は「体重を落とせ」という意味ではなく「脂肪を落とせ」という意味です。
この論文の冒頭でも、
飽和脂肪酸が多い食品の消費は血中遊離脂肪酸レベルの上昇と同様、2型糖尿病に関連している。
と、書かれています。
また、米国糖尿病学会にせよ、欧州糖尿病学会にせよ、無論、日本糖尿病学会にせよ、各国の糖尿病学会のサイトを読めば、一貫して「飽和脂肪酸摂取量は減らせ」と書かれています。
一旦糖尿病を発症すると身体が脂まみれになる理由は、以前の記事、
インスリンと糖および脂肪を世界一解り易く解説する
で、説明しました。
とは言え、食事からの飽和脂肪酸摂取は単純に摂取を控えれば良いだけなので良しとしても、インスリンの機能不全による身体の脂まみれについては、どうすれば良いのでしょうか?
という問いに対する答えが、次の記事です。
糖尿病を治したいなら運動は食前にしなさい
という訳で、何となく糖尿病も完治できそうな雰囲気になって来ましたが(笑)、次に生じる疑問というのは「これで本当に完治できるのか?」という疑問です。
つまり、脂肪を落とし、インスリン抵抗性を改善して、身体が脂まみれになる状態をなくしてやると、本当にβ細胞は回復するのでしょうか?
実は、この問いに対する答えも、欧州糖尿病学会の学会誌に掲載された論文にあり、以前の記事で紹介しています。
2型糖尿病は可逆的か?【β細胞機能の正常化を実現した研究論文】
Reversal of type 2 diabetes: normalisation of beta cell function in association with decreased pancreas and liver triacylglycerol
ついでにこれも紹介しておきます。
すい臓からたった1gの脂肪が減るだけでβ細胞は正常に回復する
な、なんと。論文には、
食事のエネルギー制限の8週間にわたって、β細胞機能は正常に向かって増加し、膵臓脂肪は減少した。
と、あります。
更に、
本研究は、ヒトにおける2型糖尿病のβ細胞欠損が持続的な負のエネルギーバランスによって可逆的であることの最初の直接的証拠である。
ヒトにおける血中脂肪酸の長期上昇はインスリン分泌を減少させ、膵臓脂肪含量と2型糖尿病との間に関連があることが以前から示されている。
中略
この研究は、2型糖尿病患者の食事摂取量の急激な制限によるβ細胞機能の正常化および肝臓グルコース産出の復帰の時間経過を初めて明らかにする。
変化は、膵臓および肝臓の脂肪減少と関連して起こった。
この新しい洞察は、個体および集団における2型糖尿病の因果関係の理解を可能にする。
と、論文は語っております。
さて、ここまで解って、これを基に治療を進めない奴は阿呆でしょう(笑)
無論、論文ですから「絶対に正しい」とは言えませんし、必ずそうなるとも限りません。
しかしながら、「治らない」と言ってる奴が「やれ」ということをやったところで、治らないのは解り切っていますし、そもそも、どこの馬の骨かも解らん連中やインチキ医師の言うことよりも、糖尿病研究の最先端を行く天下の米国糖尿病学会、欧州糖尿病学会、並びに東京大学が言うことなのです(笑)
糖尿病が完治できる可能性があるとしたら、これしかありません。
という訳で、あとは理論に沿って、各自方法論を考えて行けば良いのですが、次回は私が考えた方法論をご紹介します。
- つづく -

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