突然ですが、糖尿病の皆さんは一度は「できるなら糖尿病を完治したい。」と思ったことがあるのではないでしょうか?
時々、当ブログで話題にしますが、その「糖尿病の完治」とは一体どのような状態になることでしょうか?
病気や怪我というのは、何でもそうですが、患者の気持ちはすべて同じで、「元の健康な状態に戻りたい。」という、ただそれだけのことです。
腕を骨折して動かないのであれば、骨がくっついて元の様に動けるようになることですし、癌であれば癌が消えてなくなることでしょう。
同様に、糖尿病であれば、元の状態、いつ何どき何をどれだけ食べても血糖値が上がらない状態、つまり糖代謝の異常がなくなることです。
要するに、糖代謝の異常が完全にReverse(逆戻りして元の状態になる)することです。
そして、元の状態に戻って再発さえしなければ、もはや患者にとっては、それが「寛解」か「完治」か?ということは、ただの言葉遊びに過ぎず、どうでも良いことでしょう。
実際、私はその状態になってから、丸6年以上が経過しますが、その間、何をどれだけ食べてもただの一度も高血糖になったことはありません。
骨格筋と肝臓におけるインスリン抵抗性とβ細胞機能不全との関係
上記記事で紹介した論文では、
肝臓インスリン抵抗性およびβ細胞機能不全は、低エネルギー供給条件下(カロリー制限)で、初期の糖尿病において、劇的な逆転(寛解)が可能である。
と言っています。
つまり、初期糖尿病においては、寛解が可能である、と論文は言っている訳です。
そして、これらに関連する記事が、欧州糖尿病学会の学会誌である Diabetologia (February 2018, Volume 61)に掲載されています。
Translating aetiological insight into sustainable management of type 2 diabetes
今回は、実際に2型糖尿病患者の寛解を実現した論文に沿って、話を進めたいと思います。
*前回までの話は、↓になっています。
- 糖尿病を治したい人が最初にやるべきたった一つの重要なこと
- 糖尿病とは何か?を最初に理解しなければ改善などできない
- インスリンとは何か?
- インスリンによる糖の取り込み
- インスリンの機能的低下とは何か?【インスリン抵抗性とインスリン分泌不足】
- 骨格筋と肝臓におけるインスリン抵抗性とβ細胞機能不全との関係
ツインサイクル仮説とは何か?
ツインサイクル仮説なんて、めっちゃ胡散臭いネーミングですが、ちゃんと学会誌にそう掲載されています(笑)
(原文は、twin cycle hypothesis)
内容は過去記事で既に説明しているのですが、今一度簡単に説明します。
慢性的なカロリー過多の状態というのは、慢性的にATP需要の少ない状態のことなんですが、この時、肝臓での脂肪合成が増加します。
食事由来の脂肪と合成された脂肪は、中性脂肪という形で血中に放出されます。
が、しかし、たまたま皮下脂肪の蓄積能力を超えていると、つまり、脂肪が増え過ぎてこれ以上蓄積できない状態、あるいは、元々脂肪が付きにくい体質で容量を超えてしまった場合、脂肪は全身を駆け巡ることになり、各臓器は過剰な脂肪に晒されることになります。
肝臓においては過剰な脂肪は脂肪肝となり、これが更に肝臓での過剰な飽和脂肪酸曝露となり、インスリン抵抗性を惹起します。
骨格筋においては異所性脂肪として蓄積し、これまたインスリン抵抗性の原因となります。
肝臓にインスリン抵抗性が生じると、糖新生や糖の放出が亢進し、これがまた高血糖の原因となります。
すい臓に運ばれた脂肪もすい臓に蓄積します。
β細胞が過剰な飽和脂肪酸に晒されると、β細胞の機能障害が生じたり、脱分化が起こったりし、インスリン分泌の不全へと進んで行きます。
ツインサイクルというのは、内臓脂肪による肝臓→インスリン抵抗性、すい臓→インスリン分泌不全の二つが相互に関連し、悪循環を形成しながら憎悪して行く、ということです。

で、元々このツインサイクルでの糖代謝異常というのは、出発点が慢性的なカロリー過多です。
そこで研究者らは、この悪循環が負のエネルギーバランスを引き起こすことによって元に戻る可能性があると予測しました。
このツインサイクル仮説の実証を行ったのが、下記論文で、欧州糖尿病学会の学会誌・Diabetologia(October 2011, Volume 54)に掲載されました。
Reversal of type 2 diabetes: normalisation of beta cell function in association with decreased pancreas and liver triacylglycerol
この論文も過去記事で紹介していますが、今一度説明します。
これは、11人(男性9人、女性2人、49.5±2.5歳、罹病期間4年未満)の2型糖尿病患者に1日600kcalの超低カロリー食を8週間続け、調べたものです。
(46.4%の炭水化物、32.5%のタンパク質および20.1%の脂肪;ビタミン、ミネラルおよび微量元素)
結果は、開始後1週間で肝インスリン感受性の正常化をもたらし、その後肝臓脂肪レベルが正常値になると、肝臓からの中性脂肪の放出が低下しました。
その結果、上昇したすい臓の脂肪含量が低下し、正常な第1相インスリン分泌が生じ、8週間後には完全に糖代謝は正常になりました。
論文では、
肝臓のインスリン感受性が非常に早期に変化し、β細胞機能がより遅く変化した。
低エネルギー摂取の最初の7日間では、空腹時血糖および肝インスリン感受性は正常に低下し、肝内脂質は30%減少した。
食事のエネルギー制限の8週間にわたり、β細胞機能は正常に向かって増加し、膵臓脂肪は減少した。
(中略)
β細胞の慢性的な飽和脂肪酸曝露はグルコースに対する急性インスリン応答を阻害し、脂肪酸の除去はこの応答の回復を可能にする。
と、述べられています。
この結果は、「β細胞の死滅を阻害すれば、膵島新生が損なわれていないので、β細胞量の回復につながる」という米国糖尿病学会の論文とも矛盾しません。
β-Cell Deficit and Increased β-Cell Apoptosis in Humans With Type 2 Diabetes
この論文では、健常者と2型糖尿病患者との間で、β細胞の増殖能力自体に差はなく、糖尿病患者の場合、β細胞の死滅が健常者に比べると3倍~10倍のスピードで起こるので、結果としてβ細胞は委縮して行く、と述べられています。
この記事は、
わずか3日間の高脂肪食摂取で骨格筋のインスリン感受性は低下する
へ続きます。

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