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骨格筋に異所性脂肪が貯まるのにインスリン感受性が高い?!アスリートパラドックスとは?

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ちはっす。

以前の記事、

わずか3日間の高脂肪食摂取で骨格筋のインスリン感受性は低下する

では、わずか3日間の高脂肪食摂取が骨格筋の異所性脂肪を増殖させ、インスリン抵抗性が始まる、というお話をしました。


アスリート・パラドックスとは?


そんな異所性脂肪なんですが、実は長距離ランナーのような持久運動を行っている人達にも骨格筋の異所性脂肪が多く、にも関わらず、インスリン感受性は高い、ということが古くから知られています。
これをアスリート・パラドックスと言います。

グータラと長距離ランナーの骨格筋の異所性脂肪を調べると、驚くべきことにその割合は大して変わらないのですが、グータラにはインスリン抵抗性が起こり、長距離ランナーの方は、むしろインスリン感受性は高いのです。

誠に天道恐るべきこと、と言う他ありません(笑)

↑の写真をご覧頂ければ一目瞭然ですが、実際のところ、長距離ランナーというのは、ほとんど全員がモヤシの割には絞れていないという体型をしています。
つまり、速筋が剥げ落ちてモヤシにも関わらず、脂肪は落ち切れていないという、何とも糖質制限系のモヤシと見分けがつかないような体型が多いのです。
(これは、ケチを付けているのではなく、事実を言っているまでです。)

同じ様な体型でも、長距離ランナーのようなアスリートはインスリン感受性が高く、グータラの糖質制限モヤシはインスリン抵抗性が高いというポンコツです。

例えば、身長、体重が同程度のボクシングのフェザー級の選手と見比べてみて下さい。

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明らかに違うと言いますか、何かもう泣きたくなってきます。
私が頑なに有酸素運動をやらない理由をご理解頂けるかと思います(笑)

で、この骨格筋の異所性脂肪というのは、TypeⅠの筋線維(遅筋)に多く蓄えられます。
次にTypeⅡaの速筋、TypeⅡbの速筋は最も少ないです。
この割合も、グータラと長距離ランナーでは、ほとんど同じです。

では、何故グータラにはインスリン抵抗性が現れ、長距離ランナーはインスリン感受性が高いのでしょうか?

そんなもの「グータラだから」に決まっているんですが、そう言ってしまうと話が続かないので、一応科学的に見て行きましょう(笑)


持久運動は骨格筋における脂肪合成が亢進する


まず最初に、何ゆえ長距離ランナーのようなアスリートの骨格筋にも異所性脂肪が貯まるのか?という問題です。
これは下記論文を参照頂ければ解る通り、持久運動のような有酸素運動を行うと、骨格筋でのトリグリセリドの合成(脂肪の合成)が亢進するからです。

これは普通に考えても合目的なことなので、解り易いと思います。
持久運動を行えば、酸化系のエネルギー供給の割合が増えます。
脂肪をどんどん供給しなければ、エネルギー供給が追い付きません。

とは言え、「脂肪をどんどん供給」と言葉で言うのは簡単ですが、身体の中では、体脂肪を脂肪酸に変換するだけでも、脂肪細胞において、プロテインキナーゼAが活性化され、このプロテインキナーゼAがホルモン感受性リパーゼを活性化し、このホルモン感受性リパーゼがトリアシルグリセロールを遊離脂肪酸とモノアシルグリセロールに変換し、また、モノアシルグリセロールリパーゼがモノアシルグリセロールをグリセロールと遊離脂肪酸に変換するという作業を行っています。
そして、この遊離脂肪酸が血流に乗って、骨格筋等に運ばれます。

運動が継続されて行けば、だんだんと脂肪酸の供給が追い付かなくなって来ます。
そこで、身体は、いっそのこと骨格筋に脂肪を貯めておけば、段取りよく使えると考え出します。
(本当に考えているかどうかは知りません。笑)

異所性脂肪はTypeⅠの遅筋に最も多く、TypeⅡbの速筋には最も少ないというのも、遅筋というのは、そのエネルギー供給を脂肪から得ているためです。

誤解の無いように言っておきますが、この話は「だから有酸素運動は駄目」という話ではありません。
実は、持久運動が骨格筋での脂肪合成を亢進させることにより、正にインスリン感受性が高まっているのです。(後述します。)
グータラの異所性脂肪と長距離ランナーの異所性脂肪とは、根本的に違うということなのです。

Acute exercise increases triglyceride synthesis in skeletal muscle and prevents fatty acid–induced insulin resistance


アスリートとグータラの異所性脂肪の違い


脂肪(飽和脂肪酸)というのは、それ自体が毒ではない、ということは言うまでもありません。
我々は、安静時のエネルギー供給は、ほぼ脂肪に頼っています。

問題は、過剰な脂肪の蓄積、また身体が過剰な脂肪酸に晒される状態が慢性的に続いて行けば、身体の代謝に異常を来たしてしまうということです。

この状態というのは、ほとんど食い過ぎ(高脂肪食摂取)と不活動(運動不足)という原因に集約されます。

文明の進化により、身体活動(運動)は、ある種の嗜好の一つとなった。
しかしながら、運動が正常なヒト生理機能の形成および決定において重要な役割を果たすことは我々が生物である限り変わらない。
不活動は、死因の主要な危険因子として同定されている。
(WHO談)



上記論文によれば、持久運動などを行い、筋肉内で脂肪合成が起こると、セラミド等の脂肪酸代謝物の蓄積が抑制されます。
これらの細胞内脂肪酸代謝産物の蓄積の阻害は、骨格筋内の炎症促進性経路を抑制し、インスリン感受性を高めます。

これに関しては、米国糖尿病学会の学会誌・Diabetes にも関連する論文があります。

Insulin Resistance is Associated with Higher Intramyocellular Triglycerides in Type I but not Type II Myocytes Concomitant with Higher Ceramide Content


この研究では、骨格筋の異所性脂肪は、やはりTypeⅠ筋線維(遅筋)の方がTypeⅡ(速筋)よりも多く、ヒト骨格筋インスリン抵抗性は、速筋ではなく遅筋でのより大きな筋肉内脂肪含量、より高いセラミド含量に関連する、と言っています。

セラミドはスフィンゴ脂質の一種で、アポトーシス誘導機能(細胞死)のシグナルとしても働きます。
このセラミドがアスリートでは少なく、グータラには多いという特徴があります。

そして、また、グータラの脂肪細胞には、アスリートや健常者の脂肪細胞に比べて、炎症性サイトカインであるTNF-αのmRNA量が多く、約2.5倍あります。
TNF-αにより、脂肪細胞や筋肉細胞内のTNF-αの受容体であるTNFR1が刺激され、スフィンゴミエリナーゼが活性化され、スフィンゴミエリンからセラミドが作られ、IRS-1(インスリン受容体-1)チロシンリン酸化とPI3キナーゼ活性を低下させ、GLUT4を介するインスリンによる糖の細胞内取り込み作用が抑制され、インスリン抵抗性が高まります。

ま、要するに解り易く言えば、アスリートの異所性脂肪というのは、使うために準備するものですから、きちんと整理されていますが、グータラの異所性脂肪というのは、使いもしないものを置き場がないので、とりあえず溜め込んだ、という感じです。



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