
ちはっす。
以前の記事、
骨格筋と肝臓におけるインスリン抵抗性とβ細胞機能不全との関係
に、おきまして、欧州糖尿病学会の学会誌、Diabetogia に掲載された論文を紹介し、
筋肉におけるインスリン抵抗性は、カロリー過多と共に脂肪肝の発生を促進する、というお話をしました。
今回は、筋肉におけるインスリン抵抗性について、です。
*前回までの話は、↓になっています。
- 糖尿病を治したい人が最初にやるべきたった一つの重要なこと
- 糖尿病とは何か?を最初に理解しなければ改善などできない
- インスリンとは何か?
- インスリンによる糖の取り込み
- インスリンの機能的低下とは何か?【インスリン抵抗性とインスリン分泌不足】
- 骨格筋と肝臓におけるインスリン抵抗性とβ細胞機能不全との関係
- 世界の最先端では既に糖尿病は治っている!糖尿病完治とは何か?
このシリーズでは、脂肪肝が肝臓でのインスリン抵抗性を惹起し、肝臓における脂肪合成を亢進させることにより、各臓器に脂肪沈着が起こり、すい臓に貯まった脂肪はインスリン分泌を阻害しβ細胞の機能障害に進むという、ツインサイクルを紹介しました。
ツインサイクルというのは、肝臓とすい臓が相互に関連し合いながら、糖尿病が憎悪して行くというものです。
肝臓に脂肪が貯まる速度というのは、骨格筋のインスリン抵抗性に影響されます。
つまり、ひとたび骨格筋でインスリン抵抗性が起きれば、肝臓での脂肪沈着が起こり易くなるということです。
遊離脂肪酸の増加は骨格筋の糖取り込みが低下する
まずは、
日本内科学会雑誌第100巻第4号
肥満症と異所性脂肪,脂肪毒性
を参照下さい。
脂肪細胞から血中に放出される遊離脂肪酸の程度(リポリーシス)は,主にインスリンがホルモン感受性リパーゼ(HSL)活性を介して調節している.
リポリーシス活性は,内臓脂肪,皮下脂肪,骨格筋脂肪でそれぞれ違い,内臓脂肪で最も亢進している.
遊離脂肪酸の出入りは,内臓脂肪でダイナミックに調節されており,門脈あるいは大循環系を介して肝臓,筋肉あるいは朧β細胞といった様々な臓器への流入が増えるほど,糖脂質代謝の異常をきたしやすい
ここでは、2つの重要なポイントがあります。
第一に、脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出というのは、インスリンを介して調節されているということです。
つまり、インスリン抵抗性があったり、インスリンの分泌が少なければ、脂肪細胞からの遊離脂肪酸放出が増加するということです。
健常者であれば、食後には正常にインスリンが分泌され、遊離脂肪酸濃度は下がります。
ところが、糖尿病患者というのはインスリンの作用が低下しているため、逆に食後に遊離脂肪酸濃度が上がってしまいます。
注意すべきは、過度な糖質制限においても、インスリン分泌が少ないため、食後の遊離脂肪酸濃度は上がります。
特に、ほとんど糖質を摂らない様なスーパーポンコツ制限ともなれば、飽和脂肪酸摂取量も多いため、遊離脂肪酸濃度は跳ね上がります。
以前に紹介した、
健常者における低糖質ケーキが糖脂質指標に与える影響
低糖質ケーキは血糖値を上げにくい
日本糖尿病学会誌第55巻第6号
の調査によれば、
健常者においても、遊離脂肪酸の低下は、通常ケーキで有意に(負荷前値の 70%)低下したが、低糖質ケーキでは同28.1%であり、10名中4名は負荷後に増加した、とあります。
低糖質ケーキで血糖値が上がらない代わりに、遊離脂肪酸濃度を上げて喜んでいる訳です(笑)
第2のポイントは、脂肪組織からの遊離脂肪酸放出というのは、内臓脂肪で最も亢進しているということです。
要するに、内臓脂肪過多の糖尿病患者というのは、身体は脂漬けということになります。
遊離脂肪酸は筋肉の糖取り込みを低下させる.
NMRスペクトロスコピーによる観察で,健常者に脂肪製剤とヘパリンを持続静注して血中遊離脂肪酸を上昇させると,骨格筋内の中性脂肪(IMCL)蓄積と平行して全身糖取り込みが低下する.
解糖系のglucose-6-phosphateの低下,ひき続く糖酸化,グリコーゲン合成の抑制がその理由である7).糖取り込み低下は骨格筋のDAG量,膜分画でのPKC-βIIおよびPKC-δまたはPKCθ増加と相関し,IκB-α減少と相関したという.
PKCは,活性酸素種(ROS)を増加させるかセリンキナーゼIKK-β(IκB kinase)を活性化することでNFκBを賦活化し全身糖取り込みを低下させている可能性がある.
遊離脂肪酸によるインスリン受容体シグナルの抑制は,DAG-PKCθ経路をかいして,IRS1 シグナルを低下させ,結果的に糖輸送体(GLUT4)の細胞膜への移行を阻止して糖取り込みがおこらなくなる.
脂漬けとなった身体では、全身を遊離脂肪酸が駆け巡り、各臓器は脂肪酸に晒されることになります。
骨格筋においては、脂肪蓄積が起こり(異所性脂肪、IMCL、細胞内脂質と言う)、糖の取り込みが低下します。(インスリン抵抗性が起きる。)
そして、一旦骨格筋でインスリン抵抗性が始まると、肝臓での脂肪蓄積が起こり易くなり、肝臓での脂肪蓄積が増えると脂肪合成が亢進し、ますます身体は脂漬けという悪循環になります。
わずか3日間の高脂肪食摂取で骨格筋のインスリン抵抗性は始まる
骨格筋のインスリン抵抗性というのは、カロリー過多、または高脂肪食、あるいは不活動(運動不足)等によって起こる訳ですが、一体全体どの程度で起きるのか?という疑問を持たれるかと思います。
米国糖尿病学会の学会誌であるDiabetesに掲載された論文によれば、
12人の男性被験者がそれぞれ高脂肪食(エネルギー摂取量の55〜60%、主に飽和脂肪酸)および低脂肪食(18-23%の飽和脂肪酸)を3日間摂取し、IMCLレベル(筋肉の異所性脂肪)およびインスリン感受性を評価したところ、高脂肪食ではIMCLレベルが有意に増加し、それに伴いインスリン感受性は低下した。
(低脂肪食群ではインスリン感受性またはIMCLレベルに有意な変化なし。)
と、あります。
Effects of Intravenous and Dietary Lipid Challenge on Intramyocellular Lipid Content and the Relation With Insulin Sensitivity in Humans
わずか3日間の高脂肪食で、骨格筋の異所性脂肪は増加し、インスリン抵抗性が始まるということです。
いくら何でも3日間というのは、大袈裟でない?
と、思われる方もいらっしゃると思います。
私も話半分ぐらいで読んでいました(笑)
ところが、順天堂大学の研究でも同じ様な結果になっています。
新規インスリン抵抗性発生因子「脂肪負荷感受性」に対するスポーツの役割
こちらは、高脂肪食(60%脂肪、20%炭水化物、20%タンパク質)と、普通食(25%脂肪、55%炭水化物、20%タンパク質)で調査したところ、3日間の高脂肪食ではIMCLが増加(骨格筋の異所性脂肪が増加)し、IMCLの増加とインスリン感受性の変化に負の相関を認めた、とあります。
恐るべし、高脂肪食!

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