
お待たせいたしました。
前回の記事、【糖代謝異常はがん細胞が増殖する】の続きです。
このシリーズを見逃した方は、最初から読みましょう。
ここまで読んだ皆さんは、薄々は感づいておられると思いますが、これらの絶望的な状況というのは、そもそもの始まりである糖代謝異常(糖質代謝異常)を改善しなければ何ともならない、ということです。
そもそも糖代謝異常というのは、糖尿病そのもののことなんですが、詳しくは、下記記事を参照下さい。
糖尿病とは何か?を最初に理解しなければ改善などできない
当たり前の話なんですが、「これから糖尿病を治療する」という時に、そもそも「糖尿病とは何か?」ということを理解していなければ治療などできる訳がありません...
「糖代謝異常を改善」というのは、糖質の代謝を正常にするということですから、糖質を摂取しても高血糖にはならないということです。
ですから、「糖質を制限して高血糖にならない」と喜んでも、糖代謝異常が改善されない限りは全く意味がありません。
「糖質をとらない限り、健康体です!」なんてのは、試合をやったこともないボクサーが無敗を誇るぐらい愚かなことですし、「空気さえ入れなければパンクしない」と言ってるのと同じです。
メトホルミンによる解糖系の亢進はがんのサプレッサーT細胞を抑制する
以前の記事で、糖尿病治療薬のメトホルミンとがんリスク低下に関する記事を書いたことがあります。
2型糖尿病治療薬メトホルミンは、ガン細胞内の制御性T細胞の増殖を抑制する
通常、体内でAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)を活性化する最も手っ取り早い方法は、ATPを消費(エネルギーを消費)することです...
Attenuation of CD4+ CD25+ Regulatory T Cells in the Tumor Microenvironment by Metformin, a Type 2 Diabetes Drug
Metformin downregulates CD4+ CD25+ regulatory T cells (Treg) in tumors but not in peripheral lymphoid tissues
従来より、糖尿病患者の内、メトホルミンを投与されている群では何故だかがんリスクが低下することが解っていました。
例えば、Department of Gastrointestinal Medical Oncologyの研究によれば、糖尿病患者255人中、メトホルミン投与群ではメトホルミン非投与群より膵癌発症リスクが62%低下した、とあります。
また、前立腺癌、大腸癌、膵癌、乳癌等の患者を対象とした別々の試験では、メトホルミンを服用している患者は服用していない患者と比較して、生存期間が長いことが明らかになっています。
上記の論文では、メトホルミンががんのサプレッサーT細胞を抑制することを解明しました。
前回までの記事で説明した通り、キラーT細胞とサプレッサーT細胞は拮抗関係にあります。
サプレッサーT細胞はキラーT細胞の働きを抑制します。
がんは自前でサプレッサーT細胞を作り出し、巧妙にキラーT細胞からの攻撃を避けているのです。
だからと言って、サプレッサーT細胞自体を抑制してしまうと、今度はキラーT細胞が暴走し出し、自分の身体を攻撃してしまいます。
(自己免疫疾患やリウマチ等がその典型です。)
しかしながら、メトホルミンというのは、上手い具合にがんのサプレッサーT細胞だけを抑制する訳です。
メトホルミンにより解糖系が亢進し出すと、それまで脂肪酸をエネルギー源として依存していたがんのサプレッサーT細胞の酸化的リン酸化反応が減少、代謝バランスに異常を来たし、アポトーシス(細胞死)が誘導されるのです。
元々は我々の身体の代謝バランスに異常を来たして始まったことが、今度はがんのサプレッサーT細胞の代謝バランスが崩壊してしまうのです。
正に因果応報、天道のお怒りももっともなことです(笑)
言い方を変えれば、代謝バランスに異常を来たすことは、生物にとって致命的なことになります。
「糖質代謝異常」というのは、単に「糖が吸収できないこと」のみならず、糖の代謝によって行るはずのシグナリングが作動しなくなります。
つまり、我々の身体というのは、代謝によって様々なサブシステムのスイッチをオンにしたりオフにして機能していますが、代謝に異常を来たせば、サブシステムの電源がオンにならず、あるいは、オフにならなければならないものが動きっ放しになってしまい、各所に弊害が発生して行く訳です。
解糖系が亢進し出すと、元々解糖系に依存していたキラーT細胞は、俄然ハッスルし出します。
つまり、範馬勇次郎の背中に鬼が蘇るのです(笑)
クレアチンはT細胞を活性化する
ついでですから、最近知った論文を紹介しておきましょう。
Creatine uptake regulates CD8 T cell antitumor immunity
T cells demand massive energy to combat cancer; however, the metabolic regulators controlling antitumor T cell immunity have just begun to be unveiled.
クレアチンというのは、体内では総量の約60%が筋肉においてクレアチンリン酸として貯蔵されており、残りが遊離しています。
肉や魚を摂取すれば補充できますし、体内でも合成されます。
クレアチンリン酸はATPの再合成に使われます。
詳しくは、【糖尿病を治したいなら運動は食前にしなさい】を参照下さい。
また、サプリメントとしても一般で販売されており、筋トレマニアの皆さんに人気のある商品です。
このクレアチンが筋肉マニアの筋肉をブーストするだけでなく、T細胞をもブーストし活性化することが解ったのです。
T細胞はがんと闘うために大量のエネルギーを必要としますが、がん細胞も大量のエネルギーを奪い取り、これと競合します。
今回解ったことは、T細胞がクレアチンの取り込みを制御する表面輸送体をコードするクレアチン輸送体遺伝子の発現をアップレギュレートし、クレアチンを取り込みエネルギーを産生、自身をブーストしていたのです。
マウスの研究では、クレアチン補充により、がんモデルでのがんの成長が有意に抑制されました。
特に、PD-1/PD-L1遮断療法とクレアチン補充の組み合わせでは、がんを完全に根絶し、3か月以上がんがない状態を維持しました。
ということらしいので、次回はおまけとして、クレアチンについて語りたいと思います。

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