
ちはっす。
今回は、そもそも2型糖尿病というのは何から始まるのか?という問題について、米国糖尿病学会の学会誌に掲載された論文に基づいて、お話を進めたいと思います。
Skeletal Muscle Insulin Resistance Is the Primary Defect in Type 2 Diabetes
上記論文に目を通して頂ければ解るのですが、実は2型糖尿病というのは発症する前から始まっているのです。
発症する前に「糖尿病」とは意味が解りませんが、「2型糖尿病」と診断された時には、既に様々な代謝異常が複合的に重なり合い、ポンコツ状態の末期症状ということです。
以降は、すい臓のβ細胞は時間とともに死滅して行き、手足は萎え、目は潰れ、その内ニッチもサッチも行かなくなります。
今回のお話しというのは、その「複合的に重なり合った代謝異常」の最初に起こる代謝異常とは、一体何なのか?ということです。
これを知っておけば、例えば健常者の方なら、その点を十分に注意すれば糖尿病は予防できますし、幸運にも完治できた人なら再発予防にもなります。
あるいは、不幸にも「糖尿病」と診断された方なら、治療戦略を合理的に組み立てられるはずです。
「β細胞ガー!」とか「高血糖ガー!」と、いくら訳知り顔で語ったところで、そもそもそれらは糖尿病、つまり代謝異常が原因で起こる訳ですから、代謝異常の病因を何とかしないことには何ともならないことぐらいは阿呆にでも解りそうなものですが、本当の阿呆には解らないようです(笑)
すべては骨格筋から始まる
結論から先に言いますと、すべてに先行して、まずは骨格筋の糖代謝異常から始まります。
これは糖尿病と診断されるずっと以前から、既に始まっています。
厄介なことに、この時点では血糖値の異常が検出されませんし、自覚症状など皆無なので、見過ごされることになります。
骨格筋は、糖を吸収する主要な臓器で、食後における糖吸収の約8割は骨格筋で行われます。
つまり、食後高血糖の主要な要因は、インスリンの機能不全による骨格筋の糖代謝の異常が起因しています。
インスリンの機能不全というのは、インスリン抵抗性、あるいはインスリンの分泌不足により、インスリンの作用が減弱するということです。
一方で、空腹時においては、糖の吸収の70%~75%はインスリン非感受性組織(脳、赤血球、および内臓組織等)で行われ、主に肝臓による内因性グルコース産生の速度とほぼ正確に一致します。
上記論文では、遺伝的素因のある痩せ型健常者を調査・研究したところ、”グリコーゲン合成酵素活性の低下に続くグリコーゲン合成の障害が、検出可能な最も早い代謝異常”と、述べています。
では、グリコーゲン合成の障害はどの様に起こるのかと言えば、IRS1(インスリン受容体基質)を起点とするインスリンシグナル伝達の障害から起こり、インスリンシグナル伝達の障害は、筋肉内の脂肪蓄積(異所性脂肪)、並びに筋肉内におけるセラミド等の脂肪代謝物の増加によってもたらされます。
骨格筋に異所性脂肪が貯まるのにインスリン感受性が高い?!アスリートパラドックスとは?
但し、先に述べた様に、この段階では、まだ高血糖にはならないので、健康診断で血糖値を測っても正常と判断され、見過ごされることになります。
何故、高血糖にならないかと言うと、初期インスリン抵抗性が惹起された時、β細胞は増殖し、インスリンの分泌を増やして対応するからです。
時折、ネットの糖尿病関連の記事を読んだりすると、「β細胞を酷使してインスリン分泌を増やす」なんて書かれていたりしますが、恒常的に物理的な量を増やそうと思えば、β細胞自体が増殖して大きくならねばなりません(当たり前ですが)。
そして、実際増殖します。
ちなみに、妊娠してインスリン抵抗性が上がった時も、β細胞は増殖しています。
しかしながら、この高インスリン状態というのは、慢性的に続いて行くと、それはそれで困った問題に直面します。
インスリン抵抗性はインスリン抵抗性を生じる
身体にインスリン抵抗性が惹起された時、その病因に関わらず、正常β細胞応答はインスリン分泌を増加させます。
つまり、インスリン抵抗性の原因が何であれ、それがトリガーとなり、インスリン分泌は増えます。
ところが、健常者の血中インスリン濃度が72~96時間で72 pmol / L増加すると、インスリン刺激によるグルコース処理が30~40%減少する、という研究があります。
ちなみに、pmolという単位の意味が解らない人は、高校の化学からの勉強をお勧めします(笑)
molというのは、高校の化学の時間に「原子(分子)が6.02 x 10の23乗個集まった量を1mol」と習うはずです。
このmolに、m(ミリ)やµ(マイクロ)、n(ナノ)、p(ピコ)のp(ピコ)を付けたものがpmolです。
つまり、1pmol = 10の-12乗 mol = 0.000000000001mol ということです。
m(ミリ)は10の-3乗のことですから、1mm(ミリメートル) = 10の-3乗 m = 0.001 m ということですね。
この辺になってくると、もはや義務教育で習う話しです。
研究では、健常者に72時間低用量インスリン注入を行い、筋生検を用いて72時間後の骨格筋の状態を調べました。
結果は、インスリン刺激による筋肉のグリコーゲン合成酵素活性、全身のグルコース取り込み、および非酸化的グルコース処理(主に筋肉でのグリコーゲン合成)が大幅に減少しました。
これらの調査結果は、慢性的な高インスリン血症がインスリン抵抗性に対する代償反応というだけでなく、更なるインスリン抵抗性につながることを意味します。
Physiological hyperinsulinemia impairs insulin-stimulated glycogen synthase activity and glycogen synthesis
つまり、骨格筋のインスリン抵抗性→インスリン分泌増加→慢性的な高インスリン状態→更なるインスリン抵抗性、という悪循環、言わばポンコツ・スパイラルに陥るということです(笑)
ここで、巷の愚か者連中は何を言い出すのかと言えば、「糖質制限でインスリンを出さなければ良い!」等と言い出します。
冒頭でも述べた通り、そんなことでは、そもそもの原因である骨格筋のインスリン抵抗性の根本的な解決にはなりません。
故障した部分は直さずに使わなければ良いと言っているのと同じだからです。
「自転車がパンクしても、直さずに手で押せば良い」と言っているのと同じことです。
馬鹿では糖尿病も治らないのです(笑)

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